この5つの理由を知れば、どんなに派手な戦略も違った目で見られるようになります。その裏に何が隠れているのか、なぜ自分には同じ結果が出ないのかが分かります。同じ理由で、既製のシグナルが自分の戦略になることもありません。
1. 戦略のうち、見えるのはエントリーだけ
完全な戦略にはいくつもの要素があります。市場と時間足、エントリー条件、損切り、利益確定を決めます。ポジションサイズと、トレード中に何をするかも決めます。動画や投稿で見せてくれるのは、たいていエントリーだけです。
残りの要素は、持ち主の頭の中にあります。それを推測するしかなく、推測を1つ間違えるたびに、手法は別の手法に変わってしまいます。
2. その戦略は、他人の時間と生活のために作られている
専業トレーダー向けに作られた手法は、会社員の昼休みには実行できません。持ち主の大きな口座では妥当な損切り幅も、自分の口座には大きすぎるかもしれません。
どの戦略も、特定の1人の生活に対する答えです。その人の空き時間、口座の規模、耐えられる範囲に合わせてあります。生活が違えば、同じルールでも実際には別のルールになります。
3. 自分の気質に合わないルールは、苦しい日に捨てられる
1983年、シカゴの著名トレーダーのリチャード・デニスは、新聞広告で約20人を選び、トレードを教えました。そのうち半数近くは、ビジネスの経験がまったくありませんでした。このグループは「タートルズ」として知られています。
応募者たちは、自分の性格についての質問にも答えました。お金がどれほど大切か、そしてそれはなぜかを問う質問がありました。腕の良さと運の良さのどちらを選ぶかを問う質問もありました。全員が約2週間の訓練を受け、同じルールを教わりました。
結果は同じではありませんでした。タートルズの全員が利益を出したわけではなく、最初の数か月で外された人も何人かいました。その1人のジェリー・パーカーは、1988年に自分の会社を立ち上げ、今も同じトレンドフォローのスタイルでトレードを続けています。
ルールは同じで、人が違ったのです。自分の気質に合わない手法は、紙の上ではどれほど優れて見えても、苦しい日に捨てられてしまいます。
4. 他人の利益を見ると、リスクを取りすぎる
ある実験で、ホセ・アペステギアらは参加者に他人のトレード結果を見せました。それだけで、参加者のリスクの取り方ははっきり大きくなりました。
さらに他人を直接コピーできる選択肢を与えると、リスクの取り方はもっと大きくなりました。研究者たちは、コピートレードは過剰なリスクテイクにつながると結論づけています。この研究は2020年に学術誌『Management Science』に掲載されました。
5. 自分のものではない手法の損失からは、何も学べない
コピーした戦略で損が出ても、その理由が分かりません。相場が変わったのかもしれませんし、自分の執行が間違っていたのかもしれません。そもそも手法が最初から合っていなかったのかもしれません。
理由が分からなければ、手法を直すことはできません。そこで次の戦略に乗り換え、また同じことが繰り返されます。
5つの理由のまとめ
| 番号 | 理由 | 失うもの |
|---|---|---|
| 1 | 見えるのはエントリーだけ | 決済、損切り、ポジションサイズを推測するしかない |
| 2 | 他人の生活のために作られている | 自分の時間と口座では機能しない |
| 3 | 自分の気質に合わない | 苦しい日にルールを破ってしまう |
| 4 | 他人の利益がリスクを大きくする | 口座が耐えられる以上のリスクを取ってしまう |
| 5 | なぜ損をしたのか分からない | 手法から手法へと渡り歩いてしまう |
この5つの問題を解決してくれる既製のシグナルはありません。たいていの場合、どのシグナルもエントリー以上のものは与えてくれません。
